XenCenter

障害回復(DR)

障害回復(DR:Disaster Recovery)機能により、壊滅的なハードウェア障害などによりそのプールやサイト全体が使用不能になった場合に、仮想マシンやvAppを回復させることができます。

単一サーバーの障害からの回復については、「高可用性」を参照してください。高可用性は、同じプール内の代替サーバー上の仮想マシンを再起動します。

DRについて

障害回復では、仮想マシンやvAppを回復するために必要なすべての情報がストレージリポジトリ(SR)上に格納されます。その後、これらのストレージリポジトリが実稼働環境(プライマリサイト)からバックアップ環境(セカンダリサイト)に複製されます。プライマリサイトのリソースプールが停止すると、複製されたストレージから仮想マシンやvAppが復元され、セカンダリサイト(DRサイト)上に再作成されます。その結果、アプリケーションまたはユーザーのダウンタイムが最小限に抑えられます。

DRサイトのプールで仮想マシンが起動すると、そのプールのメタデータも複製されたストレージ上に格納されます。これにより、プライマリサイトがオンライン状態に復帰すると、セカンダリサイトで再作成された仮想マシンやvAppが、このメタデータに基づいてプライマリサイトに復元されます。

注:

障害回復機能で使用できるストレージは、HBA上のLVMまたはiSCSI上のLVMである必要があります。

XenServerの仮想マシンは、以下の2つのコンポーネントで構成されています。

  • 仮想マシンにより使用される仮想ディスク。その仮想マシンのリソースプールで構成されているストレージリポジトリ上に格納されます。
  • 仮想マシン環境の内容が記述されたメタデータ。このメタデータには、使用不能になったり破損したりした仮想マシンを再作成するために必要なすべての情報が含まれています。通常、仮想マシンの作成時にメタデータが書き込まれ、仮想マシン構成を変更すると更新されます。プール内の仮想マシンでは、メタデータのコピーがそのプール内のすべてのサーバー上に格納されます。

障害回復機能が有効な場合、プール内のすべての仮想マシンやvAppについての設定情報であるプールメタデータにより、仮想マシンがセカンダリサイト(DRサイト)上に再作成されます。各仮想マシンのメタデータには、仮想マシンの名前と説明、固有の識別子であるUUID(Universally Unique Identifier)、メモリと仮想CPUの構成、およびネットワークとストレージの情報が記録されます。また、高可用性または障害回復環境での仮想マシンの起動オプション(起動順序、起動間隔、および高可用性再起動優先度)も仮想マシンのメタデータに記録されます。たとえば、仮想マシンをDRサイトのプールに再作成する場合、vAppに含まれる各仮想マシンはメタデータに記録されている順序および間隔で起動します。

注:

障害回復を使用するには、ルートユーザーであるか。プールオペレータ以上の権限を持っている必要があります。

障害回復の用語

vApp:関連する複数の仮想マシンを単一の管理対象として論理的にグループ化したものを指します。

サイト:XenServerリソースプール、ストレージ、およびハードウェア機材の物理的なグループを指します。

プライマリサイト:フェイルオーバー対象の仮想マシンやvAppを実行する物理サイトを指します。

セカンダリサイト、DRサイト:障害発生時にプライマリサイトのフェイルオーバー先として使用される物理サイトを指します。

フェイルオーバー:障害発生時にプライマリサイトの仮想マシンやvAppをセカンダリ(障害回復)サイト上で復元する処理を指します。

フェイルバック:仮想マシンやvAppをセカンダリ(障害回復)サイトからプライマリサイトに復元する処理を指します。

フェイルオーバーテスト:フェイルオーバーの「ドライラン」で、仮想マシンやvAppを複製ストレージからセカンダリ(障害回復)サイトのプールにエクスポートしますが、これらの仮想マシンは起動しません。フェイルオーバーテストにより、障害回復が効果的に設定されているかどうかを検証できます。

プールメタデータ:名前や説明など、リソースプール内の仮想マシンおよびvAppに関する情報です。仮想マシンの構成情報には、固有の識別子であるUUID(Universally Unique Identifier)、メモリと仮想CPUの構成、ネットワークとストレージの情報、スタートアップオプションが記録されます。プールメタデータは、障害回復機能でプライマリサイトの仮想マシンやvAppをセカンダリ(障害回復)サイトのプールで再作成するときに使用されます。

障害回復インフラストラクチャ

障害回復を使用するには、プライマリサイトおよびセカンダリサイトで適切なインフラストラクチャをセットアップします:

  • プールメタデータおよび仮想マシンの仮想ディスクで使用されるストレージが、実稼働環境(プライマリサイト)からバックアップ環境(セカンダリサイト)に複製されている。ストレージの複製(ミラーリングなど)は、デバイスによって異なります。ストレージソリューションを使用してストレージの複製を処理することをお勧めします。
  • DRサイトのプールに再作成された仮想マシンおよびvAppが起動した後で、障害回復プールのメタデータと仮想ディスクを格納するストレージリポジトリを複製します。これにより、プライマリサイトがオンライン状態になったときに、これらの仮想マシンおよびvAppがプライマリサイトに復元(フェイルバック)されます。
  • DRサイトのハードウェアインフラストラクチャは、プライマリサイトと一致する必要はありません。ただし、XenServerのバージョンおよびパッチレベルが一致している必要があります。さらに、プライマリサイトすべての仮想マシンの再作成および実行に必要なリソースが障害回復プールに設定されている必要があります。

重要:

XenCenterの障害回復ウィザードでは、ストレージアレイの機能を制御することはできません。プールメタデータおよび障害発生時に再起動される仮想マシンのストレージがバックアップサイトに複製されるように設定します。一部のストレージアレイには、ストレージを自動的に複製するためのミラーリング機能が用意されています。このような機能を使用する場合は、仮想マシンがDRサイト上で再起動する前に、ミラーリング機能を無効にします。

障害回復ウィザードによるフェイルオーバー、フェイルバック、およびフェイルオーバーテスト

障害回復ウィザードにより、フェイルオーバー、フェイルバックがシンプルになります。これらの設定は、以下の手順で行います:

フェイルオーバー

  1. 仮想マシンとvAppのフェイルオーバー先として、セカンダリのDRサイトのプールを選択します。

  2. プライマリサイトから複製されたストレージリポジトリを格納するストレージターゲットの詳細を指定します。ウィザードによりターゲットがスキャンされ、検出されたすべてのストレージリポジトリが表示されます。

  3. フェイルオーバーする仮想マシンとvAppの、メタデータと仮想ディスクを格納しているストレージリポジトリを選択します。ウィザードによりストレージリポジトリがスキャンされ、検出されたすべての仮想マシンとvAppが表示されます。

  4. DRサイトに回復する仮想マシンとvAppを選択します。フェイルオーバー後に自動的に起動するか手作業で起動するかを指定します。

    ウィザードにより事前チェックが実行され、選択した仮想マシンやvAppがフェイルオーバー可能かどうかが検証されます。たとえば、仮想マシンやvAppの起動に必要なストレージがプライマリサイトのプールで使用可能かどうかがチェックされます。

事前チェックが完了し、すべての問題が解決されると、フェイルオーバーが実行されます。選択した仮想マシンとvAppが、複製ストレージから障害回復プールにエクスポートされます。フェイルオーバーが完了します。

フェイルバック

  1. DRサイト上で実行されている仮想マシンとvAppのフェイルバック先として、プライマリサイトのプールを選択します。

  2. DRサイトから複製されたストレージリポジトリを格納するストレージターゲットの詳細を指定します。ウィザードによりターゲットがスキャンされ、検出されたすべてのストレージリポジトリが表示されます。

  3. フェイルバックする仮想マシンとvAppの、メタデータと仮想ディスクを格納しているストレージリポジトリを選択します。ウィザードによりストレージリポジトリがスキャンされ、検出されたすべての仮想マシンとvAppが表示されます。

  4. プライマリサイトに復元する仮想マシンおよびvAppを選択します。フェイルオーバー後に自動的に起動するか手作業で起動するかを指定します。

    ウィザードにより事前チェックが実行され、選択した仮想マシンやvAppがフェイルバック可能かどうかが検証されます。たとえば、仮想マシンやvAppの起動に必要なストレージがプライマリサイトのプールで使用可能かどうかがチェックされます。

事前チェックが完了し、すべての問題が解決されると、フェイルバックが実行されます。DRサイトで実行されている、選択した仮想マシンとvAppが、複製ストレージからプライマリサイトのプールにエクスポートされます。

フェイルバックが完了します。

障害回復ウィザードにより同一仮想マシンについての複数の情報が検出された場合、最新の情報のみが使用されます。たとえば、情報はプライマリサイトのストレージ、DRサイトのストレージ、およびインポート先のプールに保存される場合があります。

ヒント:

仮想マシンやvAppの回復を容易にするため、仮想マシンやvAppとストレージリポジトリの対応、およびストレージリポジトリとLUNの対応を表すストレージリポジトリ名を使用します。

障害回復ウィザードを使って、中断することなく障害回復システムのフェイルオーバーテストを実行することもできます。フェイルオーバーテストでは、通常のフェイルオーバーと同じ処理が実行されますが、回復した仮想マシンやvAppはDRサイトにおいて一時停止状態で起動します。テストが終了したら、クリーンアップが実行され、DRサイトに再作成されたすべての仮想マシン、vAPP、およびストレージが削除されます。詳しくは、「フェイルオーバーテスト」を参照してください。

障害回復(DR)