仮想マシンの管理
このセクションでは、テンプレートを使用した仮想マシンの作成方法の概要について説明します。また、テンプレートの複製、エクスポートされた仮想マシンのインポートについても説明します。
仮想マシンとは
仮想マシン(VM:Virtual Machine)とは、すべての要素がソフトウェアで構成されたコンピューターを指し、物理コンピューターと同様にオペレーティングシステムやアプリケーションを実行できます。仮想マシンには、その仮想マシンに関する一連の仕様と設定ファイルが含まれ、ホストの物理リソースにより機能します。すべての仮想マシンには、物理ハードウェアと同じ機能を提供する仮想デバイスがあります。仮想マシンには、移植性と安全性が高く管理しやすいという利点があります。さらに、必要に応じて各仮想マシンの起動設定を変更できます。詳しくは、「仮想マシンの起動設定」を参照してください。
Citrix Hypervisorで使用する仮想マシンでは、IPv4およびIPv6の任意の組み合わせでアドレスを設定できます。
Citrix Hypervisorの仮想マシンは完全仮想化(HVM)モードで動作できます。特定のプロセッサ機能を使用して、仮想マシンが実行する特権命令を「トラップ」します。この機能により、変更されていないオペレーティングシステムを使用することができます。ネットワークとストレージのアクセスのために、仮想マシンにはエミュレートされたデバイスが提示されます。また、パフォーマンスと信頼性の理由から、PVドライバーを使用することもできます。
仮想マシンの作成
仮想マシンテンプレートの使用
仮想マシンはテンプレートから作成されます。テンプレートは、特定の仮想マシンをインスタンス化するさまざまな設定を含むゴールドイメージです。Citrix Hypervisorにはテンプレートの基本セットが付属しており、これらを基に未加工の仮想マシンを作成して、オペレーティングシステムをインストールできます。通常、オペレーティングシステムが最高のパフォーマンスで動作するためには、設定の最適化が必要です。Citrix Hypervisorのテンプレートは、オペレーティングシステムのパフォーマンスを最大化するように調整されています。
テンプレートを使用して仮想マシンを作成するには、以下の2つの方法があります。
-
設定済みの完全テンプレートを使用する(Demo Linux仮想アプライアンスなど)。
-
テンプレートにCD、ISOイメージ、またはネットワークリポジトリからオペレーティングシステムをインストールする。
仮想マシンにWindowsオペレーティングシステムをインストールする方法については、「Windows仮想マシン」を参照してください。
仮想マシンにLinuxオペレーティングシステムをインストールする方法については、「Linux仮想マシン」を参照してください。
注:
古いバージョンのCitrix Hypervisorで作成されたテンプレートは、新しいバージョンのCitrix Hypervisorで使用できます。一方、新しいバージョンのCitrix Hypervisorで作成されたテンプレートは、古いバージョンのCitrix Hypervisorでは使用できません。既にCitrix Hypervisor 8.2を使用してVMテンプレートを作成済みで、それを以前のバージョンで使用する場合、VDIを個別にエクスポートして仮想マシンを再度作成します。
そのほかの仮想マシン作成方法
テンプレートを使用する方法のほかに、以下の方法でも仮想マシンを作成できます。
既存の仮想マシンの複製
テンプレートを複製することで、既存の仮想マシンのコピー(クローン)を作成できます。テンプレートは、仮想マシンインスタンスの作成元(マスタコピー)としてのみ使用される通常の仮想マシンです。仮想マシンはカスタマイズ可能で、テンプレートに変換できます。仮想マシンの適切な準備手順に従ってください。詳しくは、「sysprepを使用したWindows仮想マシンの複製の準備」および「Linux仮想マシンの複製の準備」を参照してください。
注:
テンプレートを通常の仮想マシンとして使用することはできません。
Citrix Hypervisor 8.2には、仮想マシンを複製する方式が2種類あります:
-
完全なコピー
-
コピーオンライト
コピーオンライトモードでは、変更のあったブロックのみがディスクに書き込まれます。コピーオンライトモードはディスクのスペースを節約し、高速複製ができるように設計されていますが、通常のディスクパフォーマンスをわずかに低下させます。テンプレートは、速度を落とさずに複数回、高速複製できます。
注:
テンプレートを仮想マシンに複製してから、その複製をテンプレートに変換すると、ディスクのパフォーマンスが低下する場合があります。低下する量は、このプロセスが発生する回数に直接関係します。この場合、
vm-copy
CLIコマンドを使用して、ディスクの完全コピーを作成してディスクパフォーマンスを回復できます。
リソースプールでの注意事項
共有ストレージリポジトリで仮想マシンの仮想ディスクからテンプレートを作成すると、テンプレート複製処理は、共有ストレージリポジトリにアクセスできるプール内のサーバーに転送されます。これに対し、ローカルストレージリポジトリしかない仮想マシンの仮想ディスクからテンプレートを作成すると、テンプレート複製処理はそのストレージリポジトリにアクセスできるサーバーでのみ実行できます。
エクスポートされた仮想マシンのインポート
エクスポートされた仮想マシンをインポートすることで、新しい仮想マシンを作成できます。複製と同様に、特定の構成を持つ仮想マシンをさらに迅速に作成するには、仮想マシンのエクスポート/インポート機能を使用できます。この方法を使用すると、展開を迅速化できます。たとえば、特殊用途のサーバー構成があり、それを繰り返して使用する必要がある場合、必要に応じて仮想マシンを設定した後それをエクスポートし、後でインポートして、特別な構成の仮想マシンのコピーを作成できます。仮想マシンをほかのリソースプール内のCitrix Hypervisorサーバーに移動する場合にも、エクスポート/インポート機能を使用できます。
仮想マシンのインポートおよびエクスポート手順について詳しくは、「仮想マシンのインポートとエクスポート」を参照してください。
XenServer VM Tools
XenServer VM Toolsには従来型デバイスエミュレーションのようなオーバーヘッドがなく、高パフォーマンスのI/Oサービスが提供されます。
Windows向けXenServer VM Tools
Windows向けXenServer VM Tools(旧称Citrix VM Tools)は、I/Oドライバー(準仮想化ドライバーまたはPVドライバーともいいます)と管理エージェントで構成されています。
I/Oドライバーにはストレージ、ネットワークドライバー、および低レベル管理インターフェイスが含まれています。準仮想化ドライバーは、エミュレートされたドライバーに置き換わり、WindowsとCitrix Hypervisorソフトウェア間の高速トランスポートを提供します。Windowsオペレーティングシステムのインストール時、Citrix Hypervisorは従来型デバイスエミュレーションを使用して、標準IDEコントローラーと標準ネットワークカードを仮想マシンに提供します。このエミュレーションでは、組み込みドライバーを使ってWindowsをインストールできますが、コントローラードライバーのエミュレーションに内在するオーバーヘッドによりパフォーマンスが低下します。
管理エージェント(ゲストエージェントとも呼ばれます)は、高レベルの仮想マシン管理機能を備えており、XenCenterにすべての機能を提供します。
仮想マシンが完全にサポートされる構成となるように、また、xe CLIまたはXenCenterを使用できるように、各Windows仮想マシンにWindows向けXenServer VM Toolsをインストールします。仮想マシンは、Windows向けXenServer VM Toolsがなくても機能しますが、I/Oドライバー(PVドライバー)がインストールされていないとパフォーマンスが低下します。次の操作を実行するには、Windows仮想マシンにWindows向けXenServer VM Toolsをインストールしておく必要があります。
-
仮想マシンを正しくシャットダウン、再起動、または一時停止する
-
XenCenterで仮想マシンのパフォーマンスデータを表示する
-
実行中の仮想マシンを移行する(ライブマイグレーションまたはストレージライブマイグレーションを使用)
-
メモリを含んだスナップショット(チェックポイント)を作成したり、スナップショットを復元したりする
詳しくは、「Windows向けXenServer VM Toolsをインストールする」を参照してください。
Linux向けCitrix VM Tools
Linux向けCitrix VM Toolsには、仮想マシンに関する追加情報をホストに提供するゲストエージェントが含まれています。
以下の操作を実行するには、Linux仮想マシンにLinux向けCitrix VM Toolsをインストールします:
-
XenCenterで仮想マシンのパフォーマンスデータを表示する
-
実行中のLinux仮想マシン上のvCPU数の調整
-
動的メモリ制御の有効化
注:
Red Hat Enterprise Linux 8、Red Hat Enterprise Linux 9、Rocky Linux 8、Rocky Linux 9、またはCentOS Stream 9 VMでは、Dynamic Memory Control(DMC)機能を使用できません。これらのオペレーティングシステムは、Xenハイパーバイザーによるメモリバルーニングをサポートしていないためです。
詳しくは、「Linux向けCitrix VM Toolsのインストール」を参照してください。
仮想マシンの仮想化の状態を確認する
XenCenterでは、仮想マシンの[全般]タブに仮想マシンの仮想化の状態が表示されます。XenServer VM Toolsがインストールされているかどうかを確認できます。また、このタブには、仮想マシンがWindows Updateのアップデートをインストールおよび受信できるかどうかも表示されます。以下のセクションでは、XenCenterで表示されるメッセージを示します:
I/Oが最適化されました(I/Oは最適化されていません):このフィールドには、I/Oドライバーが仮想マシンにインストールされているかどうかが表示されます。
管理エージェントがインストールされました(管理エージェントはインストールされていません):このフィールドには、管理エージェントが仮想マシンにインストールされているかどうかが表示されます。
Windows Updateからのアップデート受信が可能(Windows Updateからのアップデート受信が不可能):仮想マシンがWindows UpdateからI/Oドライバーを受け取ることができるかどうかを示します。
注:
Windows Server Core 2016では、I/OドライバーのインストールまたはアップデートにWindows Updateを使用できません。代わりに、Windows向けXenServer VM ToolsインストーラーをCitrix Hypervisorのダウンロードページから入手して使用してください。
I/Oドライバーおよび管理エージェントをインストール:このメッセージは、仮想マシンにI/Oドライバーと管理エージェントがインストールされていない場合に表示されます。
サポートされるゲストオペレーティングシステムとリソースの割り当て
サポートされているゲストオペレーティングシステムの詳細な一覧については、「サポートされるゲストオペレーティングシステム、仮想メモリ、および仮想ディスクのサイズ制限」を参照してください。
このセクションでは、Citrix Hypervisor製品ファミリメンバーの仮想デバイスのサポートの違いについて説明します 。
Citrix Hypervisor製品ファミリの仮想デバイスのサポート
このバージョンのCitrix Hypervisor製品ファミリには、仮想デバイスに関するいくつかの一般的な制限があります。一部のゲストオペレーティングシステムには、特定の機能に対する下限値があります。これらの制限については、各ゲストオペレーティングシステムのインストールのセクションで説明します。設定の制限値について詳しくは、「構成の制限」を参照してください。
ハードウェアや環境などの要因が、制限値に影響する場合があります。サポートされているハードウェアについては、Citrix Hypervisorのハードウェア互換性リストを参照してください。
仮想マシンブロックデバイス
Citrix Hypervisorでは、hd*
デバイスの形式でIDEバスがエミュレートされます。Windowsの場合、XenServer VM Toolsのインストールにより特別なI/Oドライバーがインストールされ、完全に仮想化された環境であることを除き、Linuxの場合と同様に動作します。